現在、話題沸騰中のNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)。
ブロックチェーン技術を使い、デジタルアートやデジタルコンテンツなどを保存することで、この世に1つとないNFTコンテンツを作り出すことができます。2019年頃から注目を集め、2020年後半からは、BTCをはじめとする暗号通貨へのに人気の高まりに付随する形でさらに脚光を浴びました。
その結果、Twitter創業者のジャックドーシー氏の最初のツイートが化され、約3億円で落札されるなど、NFTアートの販売価格が高騰する現象が起こっています。
今回は、そんなNFTについて誰でも簡単にわかるように、ざっくり解説していきます。
NFTの仕組み
NFTの正式名称は、Non-Fungible Token(非代替性トークン)です。
NFTとは、ブロックチェーン上に記録されたデジタル資産を表します。ゲームアイテムや、デジタルアートなどをブロックチェーン上に記録すると成立します。
NFTの主な特徴として、以下の3つが上げられます。
- 非代替性(コピーや複製ができない)
- 誰でも作成可能
- 販売・取引可能(専用のマーケットプレイスで取引)
非代替性
NFTの1つ目の特徴は、非代替性、つまりコピーや複製ができないことです。
Non-Fungible Token(非代替性トークン)が正式名称のように、作成したNFTは基本的にコピーや複製ができません。なぜなら、NFTを記録するブロックチェーンでは、データの改ざんが不可能となっており、NFTのデータやNFT保有者の記録が簡単に変えることができなくなっているからです。
詳細な説明は省きますが、仮にブロックチェーン上のNFTの保有者記録を改ざんしたい場合は、大型PCなどで大量の計算を実行し、新たなブロックチェーン上のデータを作り出す必要があります。これは多大な労力を必要とするため、あまり実行する人がおらず、ゆえにそれがブロックチェーン、ひいてはNFTの非改ざん性を担保しています。
仮に、画面上にあるNFT画像をコピーしたとしても、そのデータの真贋性を示すブロックチェーン上の記録がないため、偽物のコピー品だと判定されてしまいます。そのため、NFTは贋作などの偽物が流行しやすいアート領域と非常に相性がよく、NFTアートという分野が現在拡大中です。
誰でも作成可能
NFTは、誰でも簡単に作成することができます。
後述しますが、主に普及しているNFTは、ゲームとアートのカテゴリーです。ゲームは特別なゲームアイテムやアバターなどであり、アートの場合はNFTアートなどのデジタルアートを指します。
NFTゲーム内で生成されるゲームアイテムは、ゲームをプレイして獲得するか、ゲーム内の機能でマインクラフトのように作成することができます。
一方、NFTアートは、NFTマーケットプレイス内で作成することや、これまで自分が描いた絵や画像を、そのままNFTアートとすることも可能です。
NFTは従来の仮想通貨のように、円やドルなどの法定紙幣で購入するだけのものではなく、自分自身で生み出すこともできる代物です。
販売・取引可能(専用のマーケットプレイスで取引)
NFTは、ネット上にある専用のマーケットプレイスで販売や取引することができます。
NFTを販売・取引するサイトは、NFTマーケットプレイスと呼ばれ、国内外にいくつかサービスが存在します。
【日本の主要なNFTマーケットプレイス】
【海外の主要なNFTマーケットプレイス】
- OpenSea(米)
- Rarible(米)
- SuperRare(米)
- Foundation(米)
- Crypto.com NFT Platform(香港)
- NFT SHOWROOM
- KnownOrigin(英)
- Enjin Marketplace
- treasureLand
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NFTマーケットプレイスごとのNFT取扱い
NFTマーケットプレイスでは、各マーケットごとに取り扱っているNFTの種類が異なります。
例えば、日本の大手仮想通貨取引所であるコインチェック社が運営する「Coincheck NFT」は、2つのブロックチェーンゲームのNFTアイテムを扱っています。
一方、海外の大手NFTマーケットプレイス「OpenSea」では、ゲームアイテムや、NFTアート、ドメインなど、様々な種類のNFTを取り扱っています。
主にNFTゲームの有名タイトルは、日本国内のNFTマーケットでも対応可能ですが、NFTアートなどは海外NFTマーケットの方が取り扱い量や、バイヤーが多い印象です。
そのため、自分が販売取引したいNFTに合わせて、最適なNFTマーケットを選ぶことをおススメします。
NFTマーケットプレイスごとの対応仮想通貨の違い
NFTマーケットプレイスでは、各マーケットごとで支払い対応している仮想通貨が異なります。
まず、NFTマーケットの対応仮想通貨で覚えておきたいことは、多くのNFTマーケットプレイスは、イーサリアム(以下、ETH)に対応ていることです。
なぜNFTマーケットにETHが採用されているのかといえば、
- オープンネットワークによりデータ追跡が可能
- スマートコントラクト機能で取引プロセスが自動
という理由があります。
とりあえず、NFTマーケットを利用する場合は、一定のETHを保有しておくことを強くおススメします。ETHはCoincheckやbitFlyerといった日本の仮想通貨取引所で購入可能です。
また、購入したETHは、MetaMaskという無料で使えるETHウォレットで保有するのがよいでしょう。MetaMaskがあれば、ほとんどのNFTマーケットプレイスでスムーズに取引が行えます。
NFTの市場規模
NFT関連の市場規模は、2020年で338億円です。
2018年の40億円、2019年の141億円から、毎年平均で35%ずつ上昇しています。
ジャンル | 単位:1,000ドル |
---|---|
メタバース | 14,020 |
アート | 12,947 |
ゲーム | 12,907 |
スポーツ | 7,143.5 |
コレクション | 6,169 |
ユーティリティ | 2,101 |
合計 | 55,287.5 |
また、NFTの総売上規模は、2020年で約55億円です(1ドル=100円換算)。
米statistaによれば、55億円の市場規模の内訳は以下の通りです。内訳の首位TOPは、NFTを利用したネットしたメタバースとなっています。
NFTが盛り上がっている理由
そもそも、なぜ2021年以降からNFTは盛り上げっているのでしょうか?
NFT熱狂の主な理由は以下の3つだと考えられます。
- 仮想通貨(暗号通貨)の価格上昇
- NFTの非代替性による希少価値
- NFTの種別拡大と流動性の高まり
仮想通貨(暗号通貨)の価格上昇
画像出典:Coinmarketcap
NFTが日本で注目され始めたのは、2021年1月頃です。
2021年1月頃といえば、米テスラ社CEOのイーロンマスク氏が、BTCに関するツイートを連発した時や、テスラ社がBTCを購入したことを発表し、その影響からBTCの価格が急上昇しました。
また、コロナによる投資マネーの流入先として、BTCを始めとする仮想通貨が選ばれるようになり、総じて仮想通貨市場が大きな盛り上がりを見せました。
このような仮想通貨の盛り上がりに並行し、同じくブロックチェーン技術を活用したNFTにも注目が向けられました。
具体的な出来事としては、Twitter創業者のジャックドーシー氏の初ツイートが、NFTとして競売にかけられ、約3億円で落札されたことがメディアが大きく報じられた時でしょう。このニュースにより、日本でもNFTの認知度が高まりました。
NFTの非代替性による希少価値
NFTが盛り上がっている2つ目の要因は、NFTの非代替性からくるその希少価値です。簡単に言えば、NFTはブロックチェーン上え記録された、世界唯一のデジタル資産であるため、高い希少性を持つということです。
例えば、2021年5月現在で、落札されたNFTアートの最高額は、なんと約75億円です。落札されたNFTアートは、作者が数年間の間で毎日描き上げたデジタル絵画作品5000個をまとめた1枚の絵(上記画像↑)です。
なぜこの作品に75億円もの価格が付いたのかといえば、最初に作成された作品が2007年となっており、このことから出品した作者がこの作品が一番最初のNFTアート(デジタルアート)であると主張しているためです。ちなみに、NFTとデジタルアートの境界線が曖昧なことから、作者の主張に関しては現在も論争が繰り広げられているようです。
落札したのは、世界最大のNFTファンドである「Metapurse」の創設者で、Metakovan(メタコヴァン)の名前で知られるVignesh Sundaresan氏です。インタビューに対し、今回の落札がNFTアートの新たな転換点だとし、75億円以上の価値があるとも述べています。
ブロックチェーンという技術によって代替することができないため、NFTは自然と希少価値が高くなり、それがNFTの価格を引き上げています。
NFTの種別拡大と流動性の高まり
NFTを象徴するサービスとしては、ETH上で取引される「CryptoKitties(クリプトキティ)」があります。これは、ETH上に自分だけのネコを作成することで、NFTとして取引できるサービスです。しかし、基本的にはサービス内でしか取引することはできませんでした。
一方、クリプトキティのネコではなく、ブロックチェーンゲーム内のアイテムなど、徐々にNFTに該当するデジタル資産が増え、希少価値が高いNFTがユーザー間で取引されるようになりました。
特に、2018年に世界初とされるNFTマーケットプレイスが誕生してから、マーケットプレイスというオープンな取引サービスの誕生によって、NFTの流動性が飛躍的に高まりました。2019~2021年だけでも10個以上のNFTマーケットが誕生しています。
このように、NFTの種類が増えたことと、市場拡大によるNFTの流動性向上が、NFTの価格上昇にもつながっていると考えられます。
NFT関連の注目すべき仮想通貨
NFTを活用したサービス主体のいくつかは、自社のサービス上で利用できる独自コインを発行しています。その独自コインは、該当するNFTサービスを利用することで付与され、通常の取引所では販売されていないものもあります。このように、サービスコミュニティへの貢献度に対し、サービス内で利用できるコインを付与することで、コミュニティ活動を促進させることができます。
そのため、NFTの注目度が高まるにつれて、それらの仮想通貨も徐々に人気を集めるようになってきています。
特にNFT関連で注目すべき仮想通貨は、以下の5つです。
- ETH(イーサリアム/ETH)
- Binance Coin(バイナンスコイン/BNB)
- Rarible(ラリブル/RARI)
- Enjin Coin(エンジンコイン/ENJ)
- Chiliz(チリーズ/CHZ)
ETH(イーサリアム/ETH)
ETHがNFT関連銘柄で注目されている理由は、NFTを売買するNFTマーケットプレイスの多くで、NFT決済が導入されているからです。
本サイトがピックアップした、日本と海外のNFTマーケットプレイスの中では、ほとんどのNFTマーケットプレイスでETH決済が採用されていました。そのため、NFTの関連銘柄としてETHが最も注目されています。
ただ、ETH決済時に発生する手数料(GAS代)が高騰していることが、NFT界隈では問題となっています。実際に、筆者もNFTを発行しようとしたところ、1枚の画像だけで約5万円分のGAS代が請求されました。
Binance Coin(バイナンスコイン/BNB)
Binance Coin(バイナンスコイン/以下、BNB)は、中国の大手暗号通貨取引所であるBINANCE(バイナンス)が運営する暗号通貨です。
BNBの特徴は、BINANCEでの取引手数料に利用でき、BNBを使うと通常よりも手数料が安くなるというメリットがあります。
そのBINANCEが運営する、BNBでNFTを売買可能なNFTマーケットプレイスに「treasureland」があります。
元々、多くのNFTマーケットプレイスでは、ETHが決済に利用されていますが、実はETH利用時に取引手数料であるGAS代が非常に高騰してしまうという問題があります。
そのETH特有の問題を解決するために、treasurelandでは、より安価なBinance Smart Chain(BSC)を採用しました。その結果、NFTマーケットプレイスでかかる手数料が非常に安くなりました。
Rarible(ラリブル/RARI)
Rarible(ラリブル、以下RARI)は、NFTマーケットプレイス「Rarible」の売買に利用できる暗号通貨です。RARIは世界初のNFTマーケットプレイスの運営にリンクしたトークンとして有名です。
米Raribleは、2020年に設立されたNFTマーケットプレイスであり、主に収集品、トレカ、スポーツ、アートのNFTを扱っています。Raribleのサイトは一部日本語に切り替わるなど、日本ユーザーでも使いやすい仕様となっています。
Enjin Coin(エンジンコイン/ENJ)
Enjin Coin(エンジンコイン、以下ENJ)は、シンガポールのNFTマーケットプレイス「Enjin Marketplace」で利用できる暗号通貨です。
Enjin Marketplaceは、2009年に設立されたソーシャルゲームプラットフォームであり、シンガポールを拠点するEnjin PteLtdが運営しています。
Enjin Marketplaceは、ETHネットワーク上で構築されたマーケットプレイスで、Enjin PteLtd社も2018年6月に独自のコインであるENJを発売するなど、長らくブロックチェーンゲーム業界をリードしてきた存在です。
実際に、EnjinMasterplaceではゲームアイテムがENJのブロックチェーン上に記録されることで、保存やユーザー間での交換が可能となっています。
ETHではなく、ENJを利用する理由は、ETH特有のGAS代問題がありますが、運営するEnjin PteLtd社は長らくEnjinCoinを利用した経済圏の確立を目指していることも要因として挙げられます。
Chiliz(チリーズ/CHZ)
CHZ(チリーズ、以下CHZ)とは、海外の大手スポーツクラブやエンターテインメント団体に対しと、ファンコミュニティの運営を実施するプラットフォーム上で使用される暗号通貨(トークン)です。
スポーツとエンターテイメントで世界をリードするブロックチェーン・フィンテック企業の「chiliz」が運営・開発しており、CHZは彼らが運営するプラットフォーム「Socios.com」上でのみ利用される基軸通貨となっています。
「Socios.com」は、超名門スポーツクラブのファンコミュニティで利用できる独自トークンを発行しています。具体的なチーム名として、「FCバルセロナ」や「ユベントス」、「パリ・サンジェルマン」など、世界屈指のクラブが挙げられます。
この「Socios.com」で購入された全てのファントークンは、Chilizのブロックチェーン上にNFTとして記録され、コミュニティ間で売買することが可能です。
NFTの今後
直近の仮想通貨の盛り上がりや、様々なNFTマーケットプレイスの誕生など、NFTを取り巻く環境は好材料がたくさんあります。
また日本国内を見ると、2021年から新たにNFTマーケット市場への参入を表明している企業も複数あるなど、日本国内でもNFT市場の拡大がかなり期待です。
一方、NFT購入時に支払うこととなるETHの手数料(GAS代)の高騰問題など、まだNFTにも懸念材料も残っています。ただ、GAS代などの手数料問題は、別の通貨を利用するなどの対処方法も複数提案されています。
今後もNFT市場の拡大に目が離せません。